遠い記憶の君

2009年3月6日 日常
ぽつぽつと、冷たい雨が降りだした。雨は容赦なく僕の体を濡らした。雨に濡れた大地の泥るみに足を取られて、身体が沈んで行く感覚に襲われた。前に踏み出す勇気がでない。

アパートに戻った僕は窓硝子に頬をあてて、しとしと降る雨を見ていた。夜降る雨はさみしいね。月は隠れて暗い地上を見ているのか。夜降る雨は苦しいね。屋根から落ちる雨のしずく。屋根を叩く雨の音。僕は目を閉じて、耳をふさぐ。もうなんにも聞こえない。もうなんにも見えない。

光と影があり、男と女がいて揺れている永遠のいのち。大切なものが少しづつ消えていく。それでも泡は光ながら、僕のまわりをくるくる廻る。なめらかで丸い泡は、現れたり消えたりして、時を旅する。小さな泡は、膨らませ浮力をつけ、力を蓄える。小さな尺度でも、自重で折れることはない。そして君は二度と姿を現さなかった。


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