ネットや本を読んだりして家でごろごろしていたくせに、昼下がり、堪らなくなって外に出た。ぶらぶら歩くのにちょうどいい陽気だ。
高架をくぐって電柱が並んだ大通りを歩き、やがて橋を渡って小学校の正門に出た。小学校の正門の横に公民館がある。図書館までは距離があるので、初めて公民館を利用することにした。公民館の受付に挨拶をして階段を上がった。本棚から本を取り出すと、誰もいないホールを見まわして椅子に座った。静かだ。校庭で遊ぶ子供の声が遠くに聞こえる。あとは自分の呼吸がするばかりだ。
公民館でも本を借りることができる。ただ、置いている本は少ない。しかも、図書館で人気のない本がここに集まるから、5つ並ぶ棚の本はどれもカビや体皮が混じり合い、異様な臭いを放っていた。ここは本の墓場みたいだ。
本を読んでいると妙な音がした。何かが擦れるような。それは初心者がヴァイオリンの練習をしているような音に似ている。ホールの周囲に4つの小部屋があって、それは誰でも予約して借りることができる。僕は本を置き、音の方向を確かめながらドアの前まで耳を澄ませた。部屋からは何も聞こえない。僕は床をみつめた。どうも音は床から聞こえるようだ。床の下に何かあるのか。ここは2階だから、床は1階の天井になる。エアコンが床と共鳴して奇妙な音を出しているのだろうか。足で床を叩いてみた。固い。たぶん床は鉄筋コンクリートだ。
静けさに響く小さな音。静かだからこそ気になる。僕は床にしゃがんで耳を近づけてみた。音は急に高音になり女性の悲鳴にも似ている。次第に僕の動悸は速くなって、不安な気持ちになった。何かよくないことが起きるような予感がした。
僕は公民館を飛び出した。生暖かい風が顔を浚う。嫌なことを思い出す。戦後、有名なお寺が戦火で燃えた後、宅地として売買されマンションが建てられた。しかし、入居者から幽霊が出ると噂され、廃墟と化したマンションは売却し、そこに公民館ができたという噂を思い出したのだ。
高架をくぐって電柱が並んだ大通りを歩き、やがて橋を渡って小学校の正門に出た。小学校の正門の横に公民館がある。図書館までは距離があるので、初めて公民館を利用することにした。公民館の受付に挨拶をして階段を上がった。本棚から本を取り出すと、誰もいないホールを見まわして椅子に座った。静かだ。校庭で遊ぶ子供の声が遠くに聞こえる。あとは自分の呼吸がするばかりだ。
公民館でも本を借りることができる。ただ、置いている本は少ない。しかも、図書館で人気のない本がここに集まるから、5つ並ぶ棚の本はどれもカビや体皮が混じり合い、異様な臭いを放っていた。ここは本の墓場みたいだ。
本を読んでいると妙な音がした。何かが擦れるような。それは初心者がヴァイオリンの練習をしているような音に似ている。ホールの周囲に4つの小部屋があって、それは誰でも予約して借りることができる。僕は本を置き、音の方向を確かめながらドアの前まで耳を澄ませた。部屋からは何も聞こえない。僕は床をみつめた。どうも音は床から聞こえるようだ。床の下に何かあるのか。ここは2階だから、床は1階の天井になる。エアコンが床と共鳴して奇妙な音を出しているのだろうか。足で床を叩いてみた。固い。たぶん床は鉄筋コンクリートだ。
静けさに響く小さな音。静かだからこそ気になる。僕は床にしゃがんで耳を近づけてみた。音は急に高音になり女性の悲鳴にも似ている。次第に僕の動悸は速くなって、不安な気持ちになった。何かよくないことが起きるような予感がした。
僕は公民館を飛び出した。生暖かい風が顔を浚う。嫌なことを思い出す。戦後、有名なお寺が戦火で燃えた後、宅地として売買されマンションが建てられた。しかし、入居者から幽霊が出ると噂され、廃墟と化したマンションは売却し、そこに公民館ができたという噂を思い出したのだ。
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