訴える女性

2009年4月9日 日常
その客がやってきたのは、穏やかな昼さがり、いつものように車の誘導をしているときだった。40代くらいの女性が近づいてきて、僕の前で止まると、「すみません」と言って紙片をひろげた。胸元のひらいたノースリーブのワンピース。髪はショートカット。光るピアスとシルバーネックレス。派手な姿に変なオーラが出ている。

僕は曖昧に「はあ」と答え、紙片をのぞきこんだ。それには車のナンバーと携帯番号が書かれている。これがどうしたんだろうと考えていると「この車を見たら連絡してください」と女性は言った。事情を尋ねると、変な発音の日本語で、先週、この車に子供が足を轢かれて、病院に入院している。この車を見かけたらすぐに電話がほしいと言った。

「それは、ひき逃げだから、警察に連絡したんですか?」と訊くと、お礼に1万円出す、と見当違いな返事が返ってきた。何度か、警察に連絡してくださいと言うと、韓国人らしき女性はますますわけが分からないという顔になり、警察は連絡したと言う。それよりこちらの方が早いからとか。

女性の言うことはどうも辻褄が合わない。警察に車のナンバーを言えば、その場で照会して持ち主が判明するものだ。事故に遭ったのは先週、一週間も捜すこともない。それに事故に遭うと誰でも動転して、逃げ去る車のナンバーを記憶する人は少ない。この女性はナンバーだけでなく、グレーの日産セダンということも覚えている。

警察に知らせないで示談にしたのではないか。一応、車のナンバーを控えた、けれど、逃げられた?僕には分からない事情があるのだろう。「それじゃ、お願いします」と、そのまま女性は去っていく。ピンクのワンピースがひらひら風に吹かれる姿、僕は半ば呆れながら見つめた。


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