やっとのことで布団から這い出し、ジーパンとポロシャツに着替えてトマトジュースを飲んだ。それから台所で歯を磨いて、いざ東京に行く。
新宿の街を歩いた途端、下水の匂いが鼻を突いた。繁華街特有のどぶ臭い匂いと人いきれで、どうも苦手だな。アルタを見物して、テレビや本で紹介されたアカシアに行く。まだ昼にならないのに数人の客がいた。僕はロールキャベツと極辛カレーのセットで、彼女はロールキャベツと牡蠣フライのセットを注文した。
白いシチューの中にまるまる太ったロールキャベツが浮かんでいた。まず、シチューを飲んでみる。クリームシチューより辛くて油の味がする。スプーンをロールキャベツに差し込むが、なかなか切れない。やっと切った固まりを口に入れて火傷しそうになる。馬鹿みたい。熱いと分かっているのに。
カレーをご飯にのせて食べると、いつのまにか額に汗が噴きだした。牡蠣フライはサクッとしてマヨネーズに合う。スパイシーなカレーと牡蠣フライはもう一度食べたいな。
アカシアから街を散策して紀伊国屋書店に行く。それから電車で目白に移動し、過ちを悟って安産と子育の神となった鬼子母神まで歩く。そして鬼子母神前から早稲田まで都電荒川線に乗る。満車状態で、暗黙の了解で地元の年配方が座席に座っているようだ。なんか、下町のいいところだな。
早稲田を散策したのに、日はまだ高く、旅は終わりそうにない。東京メトロの早稲田駅まで歩きながら、彼女がカナルカフェに行きたいと言う。普通のカフェと違っていて、堀を前にしてリゾート気分を楽しめるそうだ。
飯田橋駅から少し歩いてカナルカフェがあった。階段に人が並んでいて、それを見た途端、店に入るのを拒んだ。あれはね、注文するために並んでるだけと彼女が言い、列の最後に並んだ。うーん、と唸って僕も並ぶ。ドリンクとNYチーズケーキをトレーにのせて、木材の橋桁みたいなところを歩く。堀の前にテーブルとイスがあって、「こりゃーいいや」と僕はイスに腰掛ける。「ふふん、爽やかー」と彼女は風のように笑う。
堀の水面にボートが浮かんで、すでにボートを漕いでいるカップルがいる。あれは逆じゃないのか。なぜかボートの尖がってない四角い方にオールを漕いで進んでいる。よくわからないけど、楽しけりゃ、いいか。柔らかな陽が体に染みこんで、堀からの風が吹く。ずっと、こうしていたいなと思った。
そこから歩行者天国の早稲田通りを歩いて、大野屋で海老クリームコロッケを買って、毘沙門天を見て、東京メトロの神楽坂駅に着く。その頃から少し頭痛がして薬を飲みたかった。薬局がみつからないのでそのまま電車に乗る。
「そうそう、美味しい鰻屋さんがあるの」と車内で彼女が言った。
「初めてのところだけど、ブログで紹介されててさ」
「まだ、食べれるよ」と僕。
南千住で降りて線路沿いに10分くらい歩くと、風にのっていい匂いがしてくる。きっとこれは鰻だよ、と僕は言ったすぐに店があった。高級そうな門構えの尾花という店。ここでも人の列があったが、すぐに店内に通された。畳敷きの大広間に座卓がいくつも置かれて、多くのお客が鰻に舌鼓していた。
窓よりの座卓に案内され、メニューを見て驚く。ひえー、鰻重の一番安いのが3千円。僕たちはその鰻重を注文。肝吸いはどうですか?飲み物はどうされますか?と店員に言われても、ひたすら鰻重だけでと愛想笑いを浮かべる。他のお客の様子を窺うと、白焼き、鰻重、う巻き、肝吸いとかをセットにして注文している。一人1万以上の予算だよなー。定額給付金か。
開け放された窓から電車が見える。少し風が冷たくなったな。ああ、それにしても頭が痛い。なんだか寒気がして汗が出てきた。1時間待って鰻重が運ばれてきた。もう僕は頭が痛くて気持ち悪くもなってきて食欲が失せていた。蓋を開けた彼女は、「うわー、おいしそー」と歓喜の声をあげた。僕も蓋を開けて割り箸を手にしたが、あ、やべ、気持ち悪い。なんとか鰻重を半分だけ口にした。
「なんかさ、顔が白いよ」と、あまり食が進まない僕を見て、彼女が心配した。
「うん、なんか気持ち悪いんだ。もういらない」残った器の中をみつめて、ああ、どうしよう。これ、お持ち帰りできるんだろうか、と考えていたとき、「わたし、食べれるよ」と彼女が言った。いやー、救われた。よほどうまかったんだなー。
そろりそろりと道を歩いて、南千住に着き電車に乗る。北千住で我慢できなくてホームのイスに座って休憩した。僕は口元を歪めて低く押し殺した声で、薬を買ってきて、と彼女に言った。うんと返事をすると、彼女はホームを走った。しばらくして、ぜいぜい息を荒くして、スイカを忘れちゃったと、僕が預かったバックからスイカを出して、また駆けていった。
「何度も迷っちゃった。マルイのところにないし、ドラックの看板があったけど、どこにあるのか分からないし。階段を何回もあがったりさがったり」
はあー、とため息をして、僕に薬を渡してくれた。薬を呑んで30分くらいしたら、なんとか電車に乗れる気分になってきた。僕がありがとうと言うと、インフルエンザかと思っちゃったと彼女は笑った。
新宿の街を歩いた途端、下水の匂いが鼻を突いた。繁華街特有のどぶ臭い匂いと人いきれで、どうも苦手だな。アルタを見物して、テレビや本で紹介されたアカシアに行く。まだ昼にならないのに数人の客がいた。僕はロールキャベツと極辛カレーのセットで、彼女はロールキャベツと牡蠣フライのセットを注文した。
白いシチューの中にまるまる太ったロールキャベツが浮かんでいた。まず、シチューを飲んでみる。クリームシチューより辛くて油の味がする。スプーンをロールキャベツに差し込むが、なかなか切れない。やっと切った固まりを口に入れて火傷しそうになる。馬鹿みたい。熱いと分かっているのに。
カレーをご飯にのせて食べると、いつのまにか額に汗が噴きだした。牡蠣フライはサクッとしてマヨネーズに合う。スパイシーなカレーと牡蠣フライはもう一度食べたいな。
アカシアから街を散策して紀伊国屋書店に行く。それから電車で目白に移動し、過ちを悟って安産と子育の神となった鬼子母神まで歩く。そして鬼子母神前から早稲田まで都電荒川線に乗る。満車状態で、暗黙の了解で地元の年配方が座席に座っているようだ。なんか、下町のいいところだな。
早稲田を散策したのに、日はまだ高く、旅は終わりそうにない。東京メトロの早稲田駅まで歩きながら、彼女がカナルカフェに行きたいと言う。普通のカフェと違っていて、堀を前にしてリゾート気分を楽しめるそうだ。
飯田橋駅から少し歩いてカナルカフェがあった。階段に人が並んでいて、それを見た途端、店に入るのを拒んだ。あれはね、注文するために並んでるだけと彼女が言い、列の最後に並んだ。うーん、と唸って僕も並ぶ。ドリンクとNYチーズケーキをトレーにのせて、木材の橋桁みたいなところを歩く。堀の前にテーブルとイスがあって、「こりゃーいいや」と僕はイスに腰掛ける。「ふふん、爽やかー」と彼女は風のように笑う。
堀の水面にボートが浮かんで、すでにボートを漕いでいるカップルがいる。あれは逆じゃないのか。なぜかボートの尖がってない四角い方にオールを漕いで進んでいる。よくわからないけど、楽しけりゃ、いいか。柔らかな陽が体に染みこんで、堀からの風が吹く。ずっと、こうしていたいなと思った。
そこから歩行者天国の早稲田通りを歩いて、大野屋で海老クリームコロッケを買って、毘沙門天を見て、東京メトロの神楽坂駅に着く。その頃から少し頭痛がして薬を飲みたかった。薬局がみつからないのでそのまま電車に乗る。
「そうそう、美味しい鰻屋さんがあるの」と車内で彼女が言った。
「初めてのところだけど、ブログで紹介されててさ」
「まだ、食べれるよ」と僕。
南千住で降りて線路沿いに10分くらい歩くと、風にのっていい匂いがしてくる。きっとこれは鰻だよ、と僕は言ったすぐに店があった。高級そうな門構えの尾花という店。ここでも人の列があったが、すぐに店内に通された。畳敷きの大広間に座卓がいくつも置かれて、多くのお客が鰻に舌鼓していた。
窓よりの座卓に案内され、メニューを見て驚く。ひえー、鰻重の一番安いのが3千円。僕たちはその鰻重を注文。肝吸いはどうですか?飲み物はどうされますか?と店員に言われても、ひたすら鰻重だけでと愛想笑いを浮かべる。他のお客の様子を窺うと、白焼き、鰻重、う巻き、肝吸いとかをセットにして注文している。一人1万以上の予算だよなー。定額給付金か。
開け放された窓から電車が見える。少し風が冷たくなったな。ああ、それにしても頭が痛い。なんだか寒気がして汗が出てきた。1時間待って鰻重が運ばれてきた。もう僕は頭が痛くて気持ち悪くもなってきて食欲が失せていた。蓋を開けた彼女は、「うわー、おいしそー」と歓喜の声をあげた。僕も蓋を開けて割り箸を手にしたが、あ、やべ、気持ち悪い。なんとか鰻重を半分だけ口にした。
「なんかさ、顔が白いよ」と、あまり食が進まない僕を見て、彼女が心配した。
「うん、なんか気持ち悪いんだ。もういらない」残った器の中をみつめて、ああ、どうしよう。これ、お持ち帰りできるんだろうか、と考えていたとき、「わたし、食べれるよ」と彼女が言った。いやー、救われた。よほどうまかったんだなー。
そろりそろりと道を歩いて、南千住に着き電車に乗る。北千住で我慢できなくてホームのイスに座って休憩した。僕は口元を歪めて低く押し殺した声で、薬を買ってきて、と彼女に言った。うんと返事をすると、彼女はホームを走った。しばらくして、ぜいぜい息を荒くして、スイカを忘れちゃったと、僕が預かったバックからスイカを出して、また駆けていった。
「何度も迷っちゃった。マルイのところにないし、ドラックの看板があったけど、どこにあるのか分からないし。階段を何回もあがったりさがったり」
はあー、とため息をして、僕に薬を渡してくれた。薬を呑んで30分くらいしたら、なんとか電車に乗れる気分になってきた。僕がありがとうと言うと、インフルエンザかと思っちゃったと彼女は笑った。
コメント
それにしてもその後具合はいかがですか?献身的な彼女に感謝ですね。
リンク有難うございます。こちらもリンクさせていただきました。
行き先もごはんも盛りだくさんで、すごいなあ。
健啖家の彼女さんでよかったでしたねえ。
鰻を残す羽目になったらくやしいもの!(わたし、鰻好きなので。)
カナルカフェは日が暮れてから行くのもおすすめですよ。
過ぎて行く電車の窓の灯りを眺めるのが、ぐっときちゃいます。
一日がとても長くて充実してました。
僕がうなぎをゆっくり食べているので、味を堪能してるんだと思い、自分もゆっくり食べたそうですが、体調が原因だと分かると、彼女の食べるスピードが急に速くなって、僕の分も食べてくれました。お腹が苦しかったと言ってました。
時間があれば、カナルカフェで夕暮れの景色を見たいです。