白い雲の隙間から青い空が見え、近くの電線に山鳩がとまっていた。ぐるぐるぐーぐーと鳴きながら寄り添っている2匹の山鳩、どんな関係なんだろうな。
正午近く、雨水がぽたりと手の甲に落ちた。雨は音をたて、その数を増やしていく。慌てて雨具を身に着けている藤木の姿がおかしかった。僕もバイクのシートから雨具を出して身につける。
やがて小降りになった。鉛色の空気に緑の木々は濡れ傘のように重く垂れて、道路傍の用水路に蛙の鳴く声がする。哀しい泡の雨水に、冷たく光る小石。砂利道に溜まった水は、湧き水のように排水溝へ落ちていった。
少し休憩しようと、自販機でコーヒーを買って藤木のところに行った。藤木の異様な風貌に、「おっ!破けてるよ」と声をあげながら、僕は缶コーヒーを差し出した。藤木が着ているビニールの雨具が股のところで裂けていた。
「通行人が笑うので変だなと思って、自分の合羽を見たら半分切れていて、尻が丸出し。やっぱ、コンビニの安いのは駄目だね」
藤木は苦笑いしながら、反転して尻を僕に見せた。僕はあまりのおかしさに笑いがとまらなかった。もうそれは合羽ではなかった。ゴミ袋を腰にまいているような状態だった。
お客さんは増え始める。藤木が立つ第一駐車場が満車になると、僕の立つ第二、第三にまわってくる。一番遠い、第三駐車場に止めても、店まで歩いて1分くらいだ。それでも第一駐車場の中で空くのを待つお客さんがいる。他のお客さんの迷惑になっても平気だ。
そういう人は自分の思い通りに事が運ばないと不機嫌になる。世の中は思い通りにいくことが少ないし、そんなに歩くのが嫌なら、家から出なければいいと思ってしまう。だいたい、健常者は怠慢で欲深い人が多い。障害者は誘導された場所に駐車するし、足の不自由な人は杖をついて歩いてくるし、車椅子を自ら動かして店に入る。
そうやって誤解と偏見が僕の意識の中に溜まっていく。いつのまにか同じ視点でみれなくなる。誰もが価値があったりなかったりしないのに。そして、いつも不愉快な思いをするのも、心が和み癒されるのも人との触れ合いなのだ。
夕方になって西日が射した。雨に打たれてツツジの花が散っている。いや、サツキかもしれない。ツツジとサツキって、どうも違いがわからない。同じようなものに見えてしまうんだ。
ひやっとする風が吹いて、薄ぼんやりと外灯がついた。僕は誘導棒に電池を入れて点灯した。やわらかい景色は闇につつまれて、路上を通る車も少しずつ減っていく。雨が降った日の来客はすぐに退いていく。僕はやることもなく、ただ、路上に立っていた。すっかり暮れた夜空に巨大なコンクリートの影がそびえていた。
正午近く、雨水がぽたりと手の甲に落ちた。雨は音をたて、その数を増やしていく。慌てて雨具を身に着けている藤木の姿がおかしかった。僕もバイクのシートから雨具を出して身につける。
やがて小降りになった。鉛色の空気に緑の木々は濡れ傘のように重く垂れて、道路傍の用水路に蛙の鳴く声がする。哀しい泡の雨水に、冷たく光る小石。砂利道に溜まった水は、湧き水のように排水溝へ落ちていった。
少し休憩しようと、自販機でコーヒーを買って藤木のところに行った。藤木の異様な風貌に、「おっ!破けてるよ」と声をあげながら、僕は缶コーヒーを差し出した。藤木が着ているビニールの雨具が股のところで裂けていた。
「通行人が笑うので変だなと思って、自分の合羽を見たら半分切れていて、尻が丸出し。やっぱ、コンビニの安いのは駄目だね」
藤木は苦笑いしながら、反転して尻を僕に見せた。僕はあまりのおかしさに笑いがとまらなかった。もうそれは合羽ではなかった。ゴミ袋を腰にまいているような状態だった。
お客さんは増え始める。藤木が立つ第一駐車場が満車になると、僕の立つ第二、第三にまわってくる。一番遠い、第三駐車場に止めても、店まで歩いて1分くらいだ。それでも第一駐車場の中で空くのを待つお客さんがいる。他のお客さんの迷惑になっても平気だ。
そういう人は自分の思い通りに事が運ばないと不機嫌になる。世の中は思い通りにいくことが少ないし、そんなに歩くのが嫌なら、家から出なければいいと思ってしまう。だいたい、健常者は怠慢で欲深い人が多い。障害者は誘導された場所に駐車するし、足の不自由な人は杖をついて歩いてくるし、車椅子を自ら動かして店に入る。
そうやって誤解と偏見が僕の意識の中に溜まっていく。いつのまにか同じ視点でみれなくなる。誰もが価値があったりなかったりしないのに。そして、いつも不愉快な思いをするのも、心が和み癒されるのも人との触れ合いなのだ。
夕方になって西日が射した。雨に打たれてツツジの花が散っている。いや、サツキかもしれない。ツツジとサツキって、どうも違いがわからない。同じようなものに見えてしまうんだ。
ひやっとする風が吹いて、薄ぼんやりと外灯がついた。僕は誘導棒に電池を入れて点灯した。やわらかい景色は闇につつまれて、路上を通る車も少しずつ減っていく。雨が降った日の来客はすぐに退いていく。僕はやることもなく、ただ、路上に立っていた。すっかり暮れた夜空に巨大なコンクリートの影がそびえていた。
コメント
きょうの日記、すごくよかったです。
思わず、顔がにんまりしてしまいました。
26歳さん、ありがとうございます。
表現が上手くって、なんともいえない気持ちにさせられますね。
やがて娘も逞しくなっていくんでしょうね。
私もつつじとサツキの違いがわからない一人です^^;
夕焼けって私はあのそらの色がとっても大好きなのですが、その反面、とってもせつない思いが込み上げてきます。
この詩も夕焼けと彼女の心情のせつなさが重なっていて、こういう表現ができるってすごいなぁって思いました
ええ、サツキとツツジって似たような植物ですよね。
ネットで検索したら、花の咲く時期が少し違うのと、花の大きさが違うくらいですって。
比べるわけじゃないから、やっぱりわかりません。
そうですか、ミクさんは夕焼けの色彩が好きですか。
切なくなるのは、子供ころ、初めて見た夕焼けの色を思い出すからでしょうかね。
皐月と躑躅(サツキとツツジ)の違いは、わかりますが
詩の方は雰囲気しかわからない私です(><)
良い雰囲気だなぁ~とかくらいしか感性が乏しい私にはw
でもかくのさんの書く文章は、ショートショートのSF小説に似た雰囲気で
大好きです(ハァト♪)
文を読んで、情景が浮かんでくるし、文の会話が面白いし、起承転結になっているし、僕なんかより、よほど文がうまいですよ。自信をもってくださいな。