5月なのに暑い午後だ。もうそろそろ来るんじゃないかなと思いながら、台所でアイスコーヒーを作る。
「あつー、夏みたい」彼女は言い、玄関でなく庭から入ってきた。
彼女はハンカチタオルで顔をぬぐって白い歯をみせた。僕は台所のアイスコーヒーを彼女に出す。
彼女は黒い液体をひと口すすりながら「なに食べる?」と言い、笑顔で僕を見る。
「えーと、味噌ラーメンがいいな」
「そう。わたし、ニラレバ炒め定食。餃子も頼んでいい?」
「うん。いいよ」
僕たちは大食漢なのだ。そして注文したものを交換して食べることで食の神は満足する。もちろん餃子は半分づつ。
バス停には誰もいなかった。バスが来るのをのんびりと待つ。空を仰げば、雲ひとつない蒼穹に鳥がはばたく。街路樹の緑がまぶしい。気まぐれな春の南風に葉がさわさわとゆれる。
店内に入ると数人の客がいた。窓際の席を選んで座った。
もう注文するものは決めてあっても、一応はメニューを広げてみる。
「それじゃ、ニラレバでいいんだよね」
「うーん、焼肉定食もいいな。まだ食べたことないし」
彼女は曖昧な返事をする。腹が減っていれば、あれもこれも食べたくなってしまう。
「焼肉にする?」
「でもなー」
「もう、ボタン押すよ」
「じゃ、ニラレバ定食で」
僕はテーブルに備えられたボタンを押す。ブザーが鳴って店員がやってきた。
「えっと、味噌ラーメンと餃子とニラ………」と言いかけて、突然、彼女が言った。
「わたし、野菜たっぷりタンメン」
「えっ」と言ったまま、僕は絶句した。
また変えやがった、こいつ。しかも店員がくるわずかな時間に。
「それでは繰り返します。味噌ラーメン、餃子、野菜たっぷりタンメンでご注文はいいですね?」と店員が注文を繰り返す。僕は、はいと返事をする。
「まったく」僕は半ば呆れながらコップの水を飲んだ。
「だって、急に食べたくなったんだもん」
彼女がわざとらしく大きなため息をついて、はんぺんみたいにふくれている。彼女の真意を忖度しても何もわからない。なんだか可笑しくなって笑った。すると彼女もころころ笑った。
「あつー、夏みたい」彼女は言い、玄関でなく庭から入ってきた。
彼女はハンカチタオルで顔をぬぐって白い歯をみせた。僕は台所のアイスコーヒーを彼女に出す。
彼女は黒い液体をひと口すすりながら「なに食べる?」と言い、笑顔で僕を見る。
「えーと、味噌ラーメンがいいな」
「そう。わたし、ニラレバ炒め定食。餃子も頼んでいい?」
「うん。いいよ」
僕たちは大食漢なのだ。そして注文したものを交換して食べることで食の神は満足する。もちろん餃子は半分づつ。
バス停には誰もいなかった。バスが来るのをのんびりと待つ。空を仰げば、雲ひとつない蒼穹に鳥がはばたく。街路樹の緑がまぶしい。気まぐれな春の南風に葉がさわさわとゆれる。
店内に入ると数人の客がいた。窓際の席を選んで座った。
もう注文するものは決めてあっても、一応はメニューを広げてみる。
「それじゃ、ニラレバでいいんだよね」
「うーん、焼肉定食もいいな。まだ食べたことないし」
彼女は曖昧な返事をする。腹が減っていれば、あれもこれも食べたくなってしまう。
「焼肉にする?」
「でもなー」
「もう、ボタン押すよ」
「じゃ、ニラレバ定食で」
僕はテーブルに備えられたボタンを押す。ブザーが鳴って店員がやってきた。
「えっと、味噌ラーメンと餃子とニラ………」と言いかけて、突然、彼女が言った。
「わたし、野菜たっぷりタンメン」
「えっ」と言ったまま、僕は絶句した。
また変えやがった、こいつ。しかも店員がくるわずかな時間に。
「それでは繰り返します。味噌ラーメン、餃子、野菜たっぷりタンメンでご注文はいいですね?」と店員が注文を繰り返す。僕は、はいと返事をする。
「まったく」僕は半ば呆れながらコップの水を飲んだ。
「だって、急に食べたくなったんだもん」
彼女がわざとらしく大きなため息をついて、はんぺんみたいにふくれている。彼女の真意を忖度しても何もわからない。なんだか可笑しくなって笑った。すると彼女もころころ笑った。
コメント
幸せは何気ない日常にありますねー。