強い日差しの中、買い物をして病院に行く。
病室に入ると、ちょうど2人の看護師が回診をしていた。
彼女とわずかな視線を交えて、僕はカーテンの外に立っていた。
数分後、「あ、どうもすみませーん」と看護師が言って、次の患者のところに移動する。
「どう?具合の方は?」
「足が痛い」
酸素マスクは外され、昨日より元気そうだ。
僕はタオルと着替えをテレビ台の下に入れた。
「もうね、水とか、ご飯食べてもいいの」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑う。
「へえー、そうなんだ。じゃ、これも飲んでね」
僕はクーラー袋から鉄分のヨーグルトをとり出して彼女に見せた。
「ありがとう」
彼女はこれで鉄分を補給している。
「昼食の準備ができましたので、取りに来られる方は来てください」院内放送があった。
ベッドの上にテーブルを置いて、「じゃ、僕が持ってくるよ」と言う。
病室を出て、食器の置かれたワゴンから、笹山のネームをさがした。
「あ、あった」
食器を引き出して、彼女のテーブルに置く。
彼女が蓋をあけると、チンジャオロース、ゴマ油の和え物、豆腐を崩したようなものが目に飛び込んできた。うまそうだな。
僕も丸椅子に座って、自分で作った弁当を食べる。
彼女が食べてみる?と訊くので、チンジャオロースを少し食べてみた。
「あ、うまい」と僕は声を出す。
おかずは食べたが、ご飯が半分以上残っている。
「もう、食べないの?」
彼女はうなずいて、もういらないと言う。
僕は食器を返して、斜めになった彼女のベッドをハンドルを回して横にする。
足が痛い。
備え付けのボタンを押して看護師を呼ぶ。
「あ、もう点滴もないですね。これを交換して、痛み止めの座薬を入れましょう」
てきぱきと看護師は仕事をする。
しばらくして彼女が気持ち悪いとつぶやく。
看護師を呼ぶ。
「吐くほどじゃないんだけど、胸のあたりが」
胸を押さえながら彼女が言う。
「昨日、座薬を2回入れたときはどうでした?」
「気持ち悪くなった」
「そう、座薬がいけないのかしら。担当医と相談してみます」
「はい」
「一応、入れ物を用意しておきますね」
「はい」
僕は団扇をあおぎながら、彼女に風を送る。
エアコンが効いているのに暑い。
窓からの日差しが強すぎるのだ。
隣に入院している患者の知り合いが見舞いにやってくる。
世間知らずなのか、傍若無人なのか、でかい声でバカみたいに笑う。
少しずつ腹立たしくなってくる。
彼女は目を閉じて、気持ち悪さや足の痛みを耐えているようだ。
薄っすらと額に汗が光っている。
しばらくして、看護師が血圧と体温を測りにきた。
すると、隣に見舞いに来ていた人たちが帰っていった。
彼女の血圧を測りながら、違う患者の体温をチェックする看護師。
忙しくても患者を気遣う心を忘れない。
「うーん。血圧は148の97ですね。今度から座薬はやめて飲み薬にしますからね」
「はい。よかった」と彼女は笑った。
「ねえねえ、それ見て」
急に思い出したように、彼女はベッドの端を指差す。
「え、なにこれ?」
「足の中に入ってた」
「へえー、これが入ってたのか。もっと薄い鉄板だと思ってた」
「全部、とれたって」
「これだったら折れないよね」
見た感じ、チタンみたいだ。ねじは本当に普通のねじだし。こんなのが入っていたんだ。
悲しく痛ましい気持ちになる。少しずつ気分が沈んでいく。
「そか、これが入ってたんだ」
「いまね、血がざわざわ騒いでいるんだって」
「ん、骨の中の血?」
「うん。行ったり来たり」
「骨の中の血はどこに行くの?」
「さあ、わかんない」
「ふうん」
病院を出ると、日は西に傾いて、巨大な病院の影が僕をつつんだ。
病室に入ると、ちょうど2人の看護師が回診をしていた。
彼女とわずかな視線を交えて、僕はカーテンの外に立っていた。
数分後、「あ、どうもすみませーん」と看護師が言って、次の患者のところに移動する。
「どう?具合の方は?」
「足が痛い」
酸素マスクは外され、昨日より元気そうだ。
僕はタオルと着替えをテレビ台の下に入れた。
「もうね、水とか、ご飯食べてもいいの」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑う。
「へえー、そうなんだ。じゃ、これも飲んでね」
僕はクーラー袋から鉄分のヨーグルトをとり出して彼女に見せた。
「ありがとう」
彼女はこれで鉄分を補給している。
「昼食の準備ができましたので、取りに来られる方は来てください」院内放送があった。
ベッドの上にテーブルを置いて、「じゃ、僕が持ってくるよ」と言う。
病室を出て、食器の置かれたワゴンから、笹山のネームをさがした。
「あ、あった」
食器を引き出して、彼女のテーブルに置く。
彼女が蓋をあけると、チンジャオロース、ゴマ油の和え物、豆腐を崩したようなものが目に飛び込んできた。うまそうだな。
僕も丸椅子に座って、自分で作った弁当を食べる。
彼女が食べてみる?と訊くので、チンジャオロースを少し食べてみた。
「あ、うまい」と僕は声を出す。
おかずは食べたが、ご飯が半分以上残っている。
「もう、食べないの?」
彼女はうなずいて、もういらないと言う。
僕は食器を返して、斜めになった彼女のベッドをハンドルを回して横にする。
足が痛い。
備え付けのボタンを押して看護師を呼ぶ。
「あ、もう点滴もないですね。これを交換して、痛み止めの座薬を入れましょう」
てきぱきと看護師は仕事をする。
しばらくして彼女が気持ち悪いとつぶやく。
看護師を呼ぶ。
「吐くほどじゃないんだけど、胸のあたりが」
胸を押さえながら彼女が言う。
「昨日、座薬を2回入れたときはどうでした?」
「気持ち悪くなった」
「そう、座薬がいけないのかしら。担当医と相談してみます」
「はい」
「一応、入れ物を用意しておきますね」
「はい」
僕は団扇をあおぎながら、彼女に風を送る。
エアコンが効いているのに暑い。
窓からの日差しが強すぎるのだ。
隣に入院している患者の知り合いが見舞いにやってくる。
世間知らずなのか、傍若無人なのか、でかい声でバカみたいに笑う。
少しずつ腹立たしくなってくる。
彼女は目を閉じて、気持ち悪さや足の痛みを耐えているようだ。
薄っすらと額に汗が光っている。
しばらくして、看護師が血圧と体温を測りにきた。
すると、隣に見舞いに来ていた人たちが帰っていった。
彼女の血圧を測りながら、違う患者の体温をチェックする看護師。
忙しくても患者を気遣う心を忘れない。
「うーん。血圧は148の97ですね。今度から座薬はやめて飲み薬にしますからね」
「はい。よかった」と彼女は笑った。
「ねえねえ、それ見て」
急に思い出したように、彼女はベッドの端を指差す。
「え、なにこれ?」
「足の中に入ってた」
「へえー、これが入ってたのか。もっと薄い鉄板だと思ってた」
「全部、とれたって」
「これだったら折れないよね」
見た感じ、チタンみたいだ。ねじは本当に普通のねじだし。こんなのが入っていたんだ。
悲しく痛ましい気持ちになる。少しずつ気分が沈んでいく。
「そか、これが入ってたんだ」
「いまね、血がざわざわ騒いでいるんだって」
「ん、骨の中の血?」
「うん。行ったり来たり」
「骨の中の血はどこに行くの?」
「さあ、わかんない」
「ふうん」
病院を出ると、日は西に傾いて、巨大な病院の影が僕をつつんだ。
コメント
切開面が少なく傷が目立ち難い手術だったようですね。
チタンは骨癒合を進める素材で人体被害も少ない素材なんですよ(その分少し高いようですが。)
無事に抜釘できて良かったですね。
リハビリも無事終了するよう祈っております。
さすがに随分詳しいですね。
そうですね。昨年の手術の跡は2センチくらいの幅で三ヶ所くらいありました。
今回は医師が前より跡があるよ、と言われました。
見ていないのでわかりませんが。
ありがとうございます。
Kei.Kさん、相変わらず熱がありますね。
お体大事になさってくださいね。