都会の街には街路樹が植えてある。舗道の中にあるので、舗道が狭くなっている。車道に植えるわけにいかないのか。舗道を歩いていると自転車や歩行者とぶつかりそうになる。実際、僕は何度か自転車のハンドルにぶつかった。あれは結構痛いものだ。そういう狭い舗道なのに自転車はスピードを出して走り抜ける。ショップの前ではハンガーに吊るされた衣服が幅をとって置かれたりしている。

久しぶりに雨がやんで気持ちの良い天気だ。あれほど暑かった夏も過ぎて冬のように涼しい。いつのまにか夏はどこかに行ってしまったようだ。ぶらぶらと街を歩いている。すると変なことに気づいた。歩いても歩いても、何件も衣類の店が連なっている。ここは服の街なのかもしれない。

ちょうど店を過ぎたところで、樹に梯子をかけて枝を切っている人たちがいた。器用に枝から枝に渡って、その人の姿が葉の中に隠れた。しばらくして、葉がぱらぱらと舞って舗道や車道に落ちてきた。伸び過ぎた枝を切っているのだ。その見事な身のこなしに、僕はしばらく佇んでその人たちを見ていた。

突然、僕は肩を叩かれた。振り向くと、若い女性と目が合った。口には大きなマスクをしていた。え?女性が何か言ったが聞こえなかった。
「今、植木屋さんが切っている樹はスズカケノキというの。プラタナスとも言うけど。あのね、あの樹はすごいのよ」
白茶けた樹を指さして女性は言った。何がすごいんだろう。大きな葉は光に透けて黄色に見えた。
「君ね、あのイガイガは危険なの。真っ白になるよ」
そして女性は僕の前を歩き去った。危険?イガイガってなんだ。考えても分からないことは考えないことにした。

トイレとブランコがある公園で持参した握り飯を食べることにした。ベンチに座って、アルミホイルをはがして握り飯をほおばる。公園の砂場に鳩が舞い下りて、ポッポポッポ鳴きながら僕の足元に近づく。人間が食べ物を与えるから人間を怖がらない。情けや可愛さから鳥や動物に食べ物を与えるのだろうか。それがいいのか悪いのかわからない。宮島のシカのように人間を追いかけ食べ物を奪うことを考えればあまり賛成はできない。握り飯を食べ終わって水筒の水を飲む。

昼飯を食べ終えて、公園で遊ぶ子供たちを眺めたり、背の高い木の葉が揺れるのをぼんやりと見ていた。ん、なんだか鼻がむずむずする。目もちくちく痛い。なんだろう。そうか。これが女性の言っていたことなのか。スズカケノキは危険なんだ。

コメント

ラッチ
2010年10月4日23:21

毎朝通勤途中の路地にあるスズカケノキを見るのが楽しみでした。

朝の真っ青な空に伸びる、スズカケノキの柔らかな白さがなんとも綺麗で、立ち止まっては良く見上げていたものです。

かくの
2010年10月4日23:29

東京の街並みに行儀よく植えられていますね。
緑もいいし紅葉もきれいです。

あのすずかけのきにこんな秘密があったなんて知らなかった。

美藤
2010年12月2日16:04

こんにちは。
リンクしてくださってありがとうございます。

プラタナスという音の響きも、鈴懸の木という呼び名もとても好きです。もちろん大きく聳える樹そのものも。
並木が色づいて、大きな葉が散るのを芝生から眺められる新宿御苑はお薦めです。

かくの
2010年12月2日17:15

こんばんは。
神宮外苑の銀杏並木道に行ったことがありますが、新宿御苑はまだです。
機会があったら行ってみようと思います。

健康ランドやスーパー銭湯ばかりで、小さな銭湯も少なくなりましたね。
風呂に出たあとのコーヒー牛乳が楽しみでした。

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